198年3日:ローク・エルグ長邸宅の話-さぷらいず-

きのうはあのあと、ずうっとおはなをつんでました。
きにいったのがみつかるまで、いっしょうけんめいさがしました。
つんでたはなをまわりにおいておいたら、いつのまにかまわりに『いむ』がたくさんあつまってきました。おいといたおはな、みんなたべられちゃった…。
でも、がんばったから、あんまりみたことないおはなをみつけたんだよ。
えっと、『りゅーそーか』っていうんだっけ?
レムのはなより、もっとおっきくて、あかるいやつ。
それから、ポマロにちょっといろがにてる、ちっちゃいおはながたくさんあつまったのもみつけました。こっちは『セシリアのはな』ってなまえだったとおもう。
おっきいおはなはパパに、ちっちゃいおはなはママにあげることにして、いそいでおうちにかえりました。
ちょっとくらくなったみちを、はしってかえったら、おうちのまえでママがまってました。
みつからないように、てにもってたおはなをせなかにかくして「ただいま」っていったら、ママはいつもパパにいうみたいに「おかえりなさい。おそくまで、おつかれさま!」っていいました。
ママのあとについておうちにはいったら、まだパパはかえってませんでした。
ママにみつからないように、ぼくのものだけをいれておくたなに、こっそりおはなをかくしておきます。あしたになったらあげるんだ!
でも、きょうはもう、つかれちゃった…。
ママにごあいさつをして、ベッドにはいりました。おやすみなさい…。

 

「おはようアンタレス君。そろそろ朝ごはんですよ」
「うん…おきるー…」
きょうもママにおこされました。
パパもさっきおきたみたいです。
パパといっしょにかおをあらって…ぼくはきゅうに、きのうのことをおもいだしました。
そうだ、おはな!
いそいでたなまではしっていくと、ママはいませんでした。
テーブルのうえにも、まだなにものってません。
たぶん、ママはいま、レグルスのところにいってるんだろうな。
ママがいないうちにおはなをとりだして、まっていると、パパがさきにやってきました。
パパはへやのなかをみまわします。
「…アンタレス、お前だけか」
「うん。ママいないよ」
「そうか。
 レグルスの様子でも見てるんだろうな」
パパもおなじことをおもったみたい。
ホントはパパとママにいっしょにわたそうとおもったんだけど…なんだかぼく、まちきれなくなっちゃいました。
「ねぇ、パパ!」
パパにわたすおはなをせなかにかくして、パパのところにはしっていきました。
ママよりもっともっとおおきなパパをみあげます。
「どうした?」
「あのね、いいものあげる!」
「いいもの?
 いいものなら自分で持っ…痛っ!」
なにかいいかけたパパが、いきなりだまりました。
「パパ?」
「ジャメルさん!」
いつのまにか、パパのうしろにママがたっていました。
りょうてをこしにあてて、パパをみあげています。
あれ、なんだかママ、ちょっとおこってる…?
「ママ…?」
「ゴメンねアンタレス君、
 ちょっとだけ待っててね」
「え、うん。…まってる」
ママはぼくのほうをみて(いつもといっしょで、ニコニコしてました)そういうと、パパのうでをひっぱって、いっしょにベッドのあるおへやにはいってしまいました。
ぼくのめのまえで、ドアがしずかにしまります。
へやのなかから、パパとママのこえがきこえてきます。
「どうしてそういういいかた…」とか「だからって、ぜんりょくでふむのか…」とかすこしだけきこえてくるけど、なんのはなしなのかは、ぜんぜんわかんない。
でも、パパとママがいっしょにいるなら、おはなもいっしょにわたしてもいいよね!
じぶんのたなから、ママのぶんのおはなももってきて、パパとママがでてくるのをまちました。

「アンタレス君、おまたせー」
まってたじかんは、ホントにすこしだけで、ママがさっきみたいにパパをひっぱってへやからでてきました。
ママはやっぱりニコニコしてる。さっきのはきのせいだったのかなぁ。
「さっきはゴメンね。
 えっと、最初からやり直しでも、いい?」
「うん、いいよ!」
「じゃあどうしようか。
 ママはまだいない方がいいかな?」
「ううん、いっしょがいい!」
「そっか。
 じゃあ、よろしくね」
そういって、ママはパパのとなりにたちました。
ふたりでぼくをみてます。な、なんだかちょっとはずかしいなぁ。
「え、えっとね…。
 パパ、ママ、いいものあげる!」
「ホント? うれしいなぁ。
 いったいなにかなー?
 ね、嬉しいですよねジャメルさん?」
「え?」
「で・す・よ・ね?」
「あ、ああ…」
…ニコニコしてるけど、なんだかママがこわいです。
「それで? なにをくれるのかなー?」
「うん、あのねー。はい!」
ママにいわれて、ぼくはせなかにかくしていたおはなをだしました。
パパにはおおきなおはな。
ママにはちっちゃいおはなをいっぱい。
「パパ、ママ!
 おたんじょうび、おめでとう!」
そういったら、ママはホントにうれしそうにわらってくれました。
おはなをうけとってから、ぼくをぎゅーってしてくれたんだよ。
「ありがとうアンタレス君。
 これ、どうしたの?」
「あのね、きのうね、つんできたの」
「そう。
 どこまで行ってきたの?」
「えっとね…。
 ケレルさんのおうちのちかくだよ!」
「リタの家の辺り…メイビ区か。
 遠くまで行ったんだな」
こんどはパパが、ちょっとわらいながら、あたまをなでてくれました。
パパのてはすっごくおおきいから、あたまをなでてもらうと、すっごくうれしくなるんだよ!

それからみんなで、ママがやいたあまーいケーキをたべました。
テーブルのうえには、ぼくがあげたおはなが2こ、きれいにかざってありました。
ママはこういうちょっとしたかざりがだいすきみたい。
ケーキをたべながら、ママがいろいろおはなしをしてくれました。
パパとママがむかし、きのうぼくがいったところのちかくにすんでいたこと。
ぼくがおはなをさがしたところで、ママもむかしおはなをまいにちつんでいたこと。
まいにちパパにおはなをとどけていたこと。そういえばこれ、きのうケレルさんもいってた。
パパはまだママとけっこんしてなくて、ママがあげたおはなをもって、いっしょにあそびにいったりしてたんだって。
でも、パパとけっこんしてないママって…どういうこと?

…なんだか、いつもママがいってたことがわかったきがする。
『プレゼントは、おくるがわだってうれしいのよ』って。
ぼくはきのう、パパとママによろこんでもらいたくって、はじめてひとりでとおくまでいきました。
いっしょうけんめいおはなをさがしてるときも、どんなのがいいかなぁ、ってかんがえるのもおもしろかったです。
それで、おはなをわたしたら、パパもママもわらってくれて、ぎゅーって、なでなでしてくれて。
おはなをあげたことで、パパとママのむかしのはなしも、きかせてくれました。
ぼくもすっごくうれしくなったんだ! プレゼントって、すごいんだね!

 

***

 

「おかえりなさい、お疲れ様。
 あら、ジャメルさん飲んできたんですか。珍しい…」
深夜、子供達が眠った後。
遅くに帰宅したジャメルをポーラはいつものように迎えた。
「ま、まさかワケわかんなくなっちゃうほどは飲んでないですよね…?」
「…何を警戒してるんだ。大丈夫だ」
「それならいいんですけど」
普通に飲むだけならたいしたことはないが、深酒が過ぎるとジャメルは(表現的な意味で)大変な事になる。翌朝、それについて本人が全く覚えていないというのも性質が悪い。
見た感じでほろ酔い程度であると判断したポーラは、ようやく安心して息をついた。
「あのねジャメルさん、ちょっと来て」
そう言いながら腕を軽く引いて、寝室の前まで引いていく。
そしてドアを細く開けた。

ベッドには、よく似た2人の子供が眠っている。
遊びつかれたアンタレスが。
その横には小さなレグルスが。
…そして、サイドテーブルには、ポワンの花とレムの花が1輪ずつ飾ってあった。

「…あれも、昨日アンタレス君が摘んできたのよ。
 まだ早いけど、レグルス君のお祝いですって」
小声でポーラが説明する。
ポーラの頭上から部屋の中を覗きこんでいたジャメルが、ちらりとポーラを見る。
「お前、今朝の事は知ってたのか」
「なんとなく、ですけど」
見上げつつポーラも答える。
「それなら先に教えておいてくれ…」
「だって、朝はそんな時間なかったですし、
 仮に先に言っといたら、
 多分ジャメルさんじゃ『知らない振り』は無理だと思うんですよね」
「それは、確かに…。
 だからって、全力で足を踏まれるとは思わなかったけどな」
「ご、ごめんなさい…。
 慌てたんで、ちょっと他に方法が思いつかなくて…。
 …っと、後の話は、向こうでしましょうか」
「そうだな。
 起こさない方がいいだろう」
そっとドアから離れるジャメル。
ポーラは最後にもう1度、部屋の中を見る。そして。
「…おやすみなさい。また、明日」
軽く微笑み、音を立てないように、静かにドアを閉めた。

 

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***

照れ隠しと言う名のコメント

アンタレス君は子供なんで、花を数える単位はまだ1こ、2こです(笑)。

ちなみに、ポーラは前日にアンタレス君が帰宅した時点で、アンタレス君が何持って帰ってきたのかを知ってます。
リタさんから色々ぼかして聞いていたし、自分がワリとプレゼント魔な事もあって、何に使おうとしてるのかもなんとなーく認識してました。
なので、ジャメルさんがいつもどおりに要らん事を言わないように(笑)、目を光らせていたのです。
ちょうど席を外している時にイベントが始まってしまったので、なんだか微妙なやり方になってしまいましたが。
…えぇ、このオトコは子供の「いいものあげる!」に碌な返事をしなくてですね。
中の人はそのシーンを目撃するたびに「いいから受け取っとけやー!」(ドカーン)って気持ちでいっぱいになってました。なので中の人は、ゲーム内でちちもらオトコのプレゼント受け取り台詞を知りません(笑)。
ただでさえアンタレス君の「いいものあげる!」はレアだってのに…おまい…。(わなわな)
ホント、ポーラが干渉できるのなら絶対この話のとおりにやってると思います(笑)。

 

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