198年2日:ローク・エルグ長邸宅の話-おもいつき-

ぼくはアンタレス・スターっていいます。1さいです。
パパのなまえはジャメルです。
えっと…かぜの、きしたい? 『シルフィスのきし』です。
パパはずうっとティルグでがんばってるんだよ、って、ママがうれしそうにいってました。
ママのなまえはポーラです。
ローク・エルグのエルグちょうをやってます。
ママがエルグちょうなので、ぼくたちはロークのはたけのいりぐちにある、おおきなおうちにすんでいます。
ママはいつもニコニコしているけど、エルグのおしごとをしてるときは、すっごくしんけんです。
そんなママをみてると、ぼくもおおきくなったらエルグちょうになりたいなぁ、っておもいます。
きょねん、おとうとがうまれました。
レグルス、っていいます。
パパにもママにも、ぼくにもにてないかみのいろをしているけど、「このいろは、ママのパパににたのね」ってママがいってました。
てもあしも、ぼくよりずうっとちっちゃいんだ。
まだ、ぜんぜんおはなしもできないし、ベッドでねてるだけなんだけど、すっごくかわいいんだよ。はやくいっしょにあそびたいなぁ。

ママはパパがだいすきです。
あんまりいわないけど、パパもママがだいすきです。
それでね、ぼくはパパもママもだいすきです!

 

「おはようアンタレス君。そろそろ朝ごはんですよ」
「うん…おきるー…」
きょうもママにおこされました。
パパもさっきおきたみたいです。
パパといっしょにかおをあらって、テーブルにいくと、そこにはあさごはんがならんでました。
ぼくのせきは、ママのとなり。
めのまえには、パパがすわっています。
なんだかぱさぱさしてるようなチーズトーストをたべながら、いっぱいおはなしをします。
いつも、ママとぼくがおはなしします。パパはきいてるだけのことがおおいです。
でも、ときどきすっごくいいことをいってくれるのよ、ってママはいいます。
いつもみたいにごはんをたべながら、ぼくはとってもだいじなことをおもいだしました。
(あ! あしたはパパとママのたんじょうびだ!)
ぼくのはじめてのたんじょうびのとき、ママはいっぱい、パパはいつもみたいにちょっとだけ、おいわいをしてくれました。
あまーいプリンもたべました。すっごくおいしかったなぁ。
たんじょうびはおいわいをするんだ、って、ママからききました。
じゃあ、ぼくもパパとママのおいわいがしたいなぁ…。
「…アンタレス君、どうしたの?」
ちょっとかんがえてたら、ママにしんぱいされちゃったみたいです。
パパも、なんだかふしぎそうにぼくのことをみてます。
「うん、あのね…」
っていおうとして、きゅうにぼくは、ナイショにしときたい、っておもいました。
ナイショにしといて、あした、ビックリしてもらいたいなぁって。『さぷらいず』ってやつです。
ママがときどきパパにやってます。
ときどき、やりすぎておこられてます。
でも、おこられてもなんだかママはうれしそうです。パパもほんきでおこってるんじゃなくて、さいごはやっぱりうれしそうです。
…うん、いまは、ナイショにしとこう。
「…あのね、なんでもなーい!」
いそいであさごはんをたべて、たちあがりました。
「ごちそうさまでした!
 ぼく、きょうはあそびにいってくるね!」
「えっ、アンタレス君一人で行くの?
 大丈夫?」
「だいじょぶです!
 ぼく、もうすぐ2さいだから、ひとりでおでかけもできるんだよ!」
「そっか。
 でも気をつけてね。あんまり遠くまで行っちゃダメよ」
「はーい。
 じゃあ、いってきまーす!」
ママにいっつもいわれてるように、げんきよくあいさつ。
それからいえをとびだしました。

 

***

 

「…2歳か。
 子供が大きくなるのは、早いな」
アンタレスが出て行った後、ジャメルは軽く息をついた。
食後のハーブティーを出しながら、ポーラは微笑む。
「そうですねぇ。
 少し前に歩き始めたと思ったら、もうあんなに元気に走り回っちゃうんですから。
 あんまり外に出ない子だと思ってましたけど、
 やっぱり子供はお外でいっぱい遊んだ方がいいのよ」
「確かにそうだな」
ジャメルも軽く微笑んだ。
自分の席に戻り、ハーブティーを飲みながらポーラは共用棚の方を見る。
「アンタレス君の誕生日は…明後日ですね。
 明日の分も合わせて、ケーキ焼いとこうかなぁ」
「お前が焼くのか。…大丈夫か?」
少し不安げなジャメルに向き直り、ふにゃんと笑ってみせる。
「ダイジョブなのよ。
 私、結構甘い物作るのは得意ですから」
「そこが不思議なところなんだけどな」
「不思議とか言われた!
 …でも、あんまり反論できないのよ…」
少しだけ肩を落としつつ立ち上がり、棚の中を確認する。
簡単なケーキを作れる程度の食材は揃っているはずだ。
「やっぱり、アンタレス君用には…ミルクケーキ?
 ほんわりふわふわ美味しそうです。
 あ、そういえば秘蔵の極上ミルクもあるから、奇跡のケーキが作れるのかぁ。
 そっちにしようかなぁ」
だんだん楽しくなってきたらしく、ポーラはフンフンと鼻歌を歌いながら食材を確認する。
「それで明日は…ジャメルさん宝珠パイ好きですよね。
 じゃあ、宝珠の果実を使って宝珠ケーキでもいいなぁ。
 …大きなパチャとかがあったら、おっきなケーキが作れるんですけどねぇ」
「誰がそんなに食べるんだ」
「…やっぱ、食べきれないかな?」
「無理だろう。
 お前もオレも、もちろんアンタレスも、
 そんなに食べる方じゃない」
「確かにそっか。
 どっちにしても作れないんだけど、諦めるのよ…」
一通り確認し終わったところで、席に戻る。
どうやら明日以降の方針は決まったらしい。
残っていたハーブティーを飲み干して、既に飲み終わっていたジャメルの前のカップもまとめて片付ける。
「さて! それじゃ、私も出ますね。
 今日は仕事始め、っと。
 だから、朝のうちに買い物に行っとこうかなぁ」
「オレもそろそろ出る。
 …レグルスは、放っておいても平気か?」
「もちろんですよ。
 仕事中に時々見に帰ってますから、心配しなくてもダイジョブです」
「そうか」
「こういう時、この家の位置は便利ですねぇ。
 普段は『ご近所さん』がいなくてちょっと寂しいですけど」
「その分、気兼ねしないってのもあるけどな」
「気兼ね? 何を?」
「まあ、色々な」
「ふーん…。まぁいっか。
 それじゃ、いってきまーす!」
ジャケットを羽織り、帽子をきちんとかぶり。
『母』から『エルグ長』へと気持ちを切り替えたポーラは、いつものように家を出る。
ティルグ員のコートを羽織って帽子もかぶり。
『父』から『シルフィスの騎士』に変わったジャメルも家を出た。
後に残るのは、ベッドで静かに眠る小さな男の子だけ。

 

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***

照れ隠しと言う名のコメント

ポーラの料理がどっかおかしいのは、仕様です(笑)。
もちろん、子供相手にだってぱさぱさ料理をおみまいするよ!

ポーラもジャメルさんも、ワリと食が細めです。
これは、ゲーム内で大食漢の宴参加時の結果からきてます。
ジャメルさんは2人目で脱落。別の年に事故で参加したポーラは、真っ先に沈没してました(笑)。
ポーラはともかく、ジャメルさんは『戦うオトコ』なんだから、もっと食わんといけないんじゃないかと思うんですけどねぇ…。

 

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