無策と無欲

1/31は愛妻の日なんだそうですね。
だから愛妻を労って…なんて意見が流れてきたんですが、うちのジャメルさんはそういう事をしそうにない(笑)。
そんなこの日がどうなったのかを、ちょっと考えてみました。

 

ある記念日のスター家

夕刻の酔いどれ騎士亭。

ベネット
「あ、ジャメルさん、こんばんわ」
ジョシュア
「あれ、お前今日もここか」
ジャメル
「…騎将。ベネットもか。
 今日も、ってどういう意味だ」
ベネット
「いえ、今日くらいはさっさと帰るのかと」
ジャメル
「?」
ジョシュア
「何だよお前、知らないのか。
 今日は世間的には『愛妻の日』って言われてんだぞ。
 見てみろ、今日、ヨメ持ちは基本ここにいないじゃないか。
 だからお前も早めに帰ってポーラに何かするのかと思ってた」
ジャメル
「そうか、今日はそんな日か。
 ポーラも何も言わないから、普通に忘れていた」
ジョシュア
「ま、お前はそうじゃないかとも思ったんだけど、マジでそうだったのか。
 って言うか、ポーラがこういう日に関して
 『今日は愛妻の日なんですから、私を労わってくださいね♪』なんて
 言うわけないだろ。
 発言も要求もストレートなワリに、そういう事はしないオンナなんだから」
ジャメル
「…それは、確かに…」
ベネット
「騎将、ポーラさんの真似、結構上手いですね。
 声はそのままですから、微妙に気持ち悪いんですけど」
ジョシュア
「うるせぇ、キモチワリィとか言うな。
 オレだって実際やってみて鳥肌立った。
 …で、そんな事はいいんだよ。
 今からさっさと帰って、何かすりゃいいじゃねーか」
ジャメル
「何か、って言われてもな…」
ジョシュア
「いや、別にいいんだぜ、何もしなくても。
 あいつは絶対何も言わないだろうしな。
 ただこう言うのはなぁ、あいつ自身よりも、
 あいつの友人の方が問題になってくるんじゃないかと思ってるんだよ。
 例えば、リタとか」
ジャメル
「…!」
ジョシュア
「リタはお前らに対して遠慮ないからなー。
 何も無かったって事が知れたらお前、
 何らかの形でアラクト亭に呼び出されて、
 ロークのお嬢さんたちから精神的な袋叩きだぞ。
 今のリタはアラクト亭のマスターだし、
 あそこに入り浸るお嬢さん方は、ポーラの友人だからなぁ。
 …まぁそうなっても仕方ねーと思うけど」
ジャメル
(そうなる可能性が容易に思いつく)(そしてため息)
「…わかった。今日はもう帰る」
ジョシュア
「おー、そうしとけそうしとけ。
 後で、何があったのかは聞かせろよ。その時は酒でも奢るから。
 じゃーな!」

(ジャメルさん退場)

ベネット
「…騎将、炊き付けましたよね」
ジョシュア
「ん? まーな。
 面白くなりそうな事なら、起こしといた方がいいんだ。
 ただ実際、何もしなかったらアラクト亭で惨事発生、ってのも
 あながち間違ってない気がするんだよな。
 だからコレはある意味、『人助け』だよ」
ベネット
「女性はまとまると怖いですよねぇ…」
ジョシュア
「そういうところも可愛くていいんじゃねーか」
ベネット
「騎将は本当に、そういうところ、ぶれませんねぇ…」

 

***

 

夕刻のスター家。

ポーラ
「…よし! 何か上手くできた気がする!
 アンタレスくーん、レグルスくーん。
 プリンできたから、おやつにしようか」
アンタレス
「えっプリン? 食べる!」
レグルス
「わーい!」
ポーラ
「それじゃ、先に座って待っててね、持っていくから」
(4つ作ったんですけど、ジャメルさん、この時間じゃ帰ってこないですよねぇ。
 帰ってきてから食べてもらえばいいか。甘いの好きだし…)
ジャメル
「ただいま」
ポーラ
「…えっ? お、おかえりなさい」
レグルス
「パパー! おかえりなさーい!」(飛びつく)
アンタレス
「すごい! パパも来た!」(きゃっきゃ)
ポーラ
「今日は早いですねぇ…」
ジャメル
「悪いのか?」
ポーラ
「ううん、全然悪くないのよ。
 って言うか、いいタイミングで帰ってきたと思って。
 今からみんなでプリンを食べようと思ってたんですよ」
ジャメル
「プリン…。
 前に早く帰ってきた時は、お前たちだけで食べてたんだよな」
ポーラ
「う…あの時はホントごめんなさい…。
 そ、そんな事がないように、今回はちゃんと4つ作ったのよ。
 ジャメルさんの帰宅が遅かったら、後で食べてもらおうと思ってたのよ」
ジャメル
(席に着く)
「ま、過ぎた事だな。
 ほらレグルス、お前も座れ」
レグルス
「うん!」
アンタレス
「ママ、何か手伝う?」
ポーラ
「ウフフ、アンタレス君ありがとう。
 でも大丈夫よ、もう持っていくからね。
 …はい、今日は『奇跡のプリン 』ですよー」(パパッとテーブルに並べる)
ジャメル
「…よく材料あったな」
ポーラ
「今日はラダスタインのご機嫌が良かったんですよ。
 卵はあるのわかってたから、甘いデザートにしてみました。
 さぁ、ドウゾ!」
アンタレス
「あまーい!」(一口食べていい笑顔)
レグルス
「あまーい!」(プリンで口の中いっぱいにしながら)
ポーラ
「…うん、美味しくできてるのよ」(食べながら)
ジャメル
「お前、確かに甘いものの成功率は高いんだよな…」(食べながら)
ポーラ
「たくさん作ったから鍛えられました!」
アンタレス
「たくさん? えー僕そんなに食べてないよ?
 ママ食べちゃったの? ずるい!」
ポーラ
「あ、ゴメンね。
 作ったのは、アンタレス君が生まれる前なのよ。
 大丈夫よ。これからだって、いっぱい作ってあげるから」
レグルス
「ぼくも! ぼくもたべるー!」
ポーラ
「もちろんレグルス君もね」
レグルス
「わーい!」
ポーラ
「夢は『でかいプリン』を作る事なんですよ。
 おっきなプリンをみんなで食べるのとか、子供の頃のアコガレでした。
 でも、大きい系のパチャが手に入らないんですよねぇ…。
 リタさんトコで扱ってくれないかなぁ」(ため息)
ジャメル
(リタの名前を聞き、騎士亭でのやり取りを思い出して軽くむせる)
ポーラ
「だ、大丈夫ですか? 何かプリンにおかしいところでもありました?」
ジャメル
「いや、大丈夫だ…」
ポーラ
「ならいいんですけど…。
 さて、食べ終わった? じゃ、ごちそうさまでした!」
アンタレス
「ごちそうさまでした!」
レグルス
「でしたー!」

 

***

 

子供が寝静まってから。ベッドの中で寝る前に。

ポーラ
「初めて作りましたけど、今日のプリンは美味しかったなぁ…」(うふうふ)
ジャメル
「そうだな。
 結婚当初は失敗する事の方が多かったけどな…」
ポーラ
「あの頃は色々特訓してもらいましたねぇ…。
 って言うか、ジャメルさんの方が色々上手いって、やっぱりフクザツですよね…」
ジャメル
「そう言われても…。
 …ところで。
 なあ、ポーラ」
ポーラ
「何ですか?」
ジャメル
「いや…今日は…」
ポーラ
「『愛妻の日』ですよね」
ジャメル
「やっぱり知ってたのか」
ポーラ
「一応は。
 エルグでも皆さん、色々な意味でそわそわしてましたし。
 エミリアンさんも『帰りに市場に寄ってプレゼントを~』とか言ってました。
 …あ、そうだ。コレ言わなきゃ。
 今日はありがとうございます」
ジャメル
「いや、オレは結局何もしてないが…。
 実際、騎士亭で言われるまで気付いてもいなかったんだ。
 帰宅中も、具体的に何をするとか思いつかなかったしな」
ポーラ
「騎士亭で…って事は、言い出したのはジョシュアさんですね」
ジャメル
「ああ。よくわかったな」
ポーラ
「こういうのにすごく気が付く人なんですよねぇ。
 …っと、ジョシュアさんの事はいいんでした。
 何もしてないけど、それでもちょっと嬉しいのよ」
ジャメル
「何がだ?」
ポーラ
「変わらず、普段どおりでいてくれる事。
 愛妻の日に早く帰ってきてくれて、一緒にいる時間が長かった事。
 それから、炊き付けられたとはいえ、家でちゃんとその話をしてくれた事」
ジャメル
「…そんな事でいいのか」
ポーラ
「普段と違う事とかされたら、逆に戸惑っちゃいますもの。
 だから、私としてはコレが1番嬉しかったのよ。
 どんなスゴイ事よりも、嬉しい事をしてもらえるのが嬉しいのよ」
ジャメル
「…」
ポーラ
「気にかけてくれた、って事は、
 ちゃんと『愛』妻だと思われてる、って事でもありますからね」
ジャメル
「(ぐっ…)そ、それは…」
ポーラ
「えー、違うのー?」(ちょっと不満気)
ジャメル
「…いや、間違っては、いないな…」(明後日の方向向きながら)
ポーラ
(にこにこ)
ジャメル
「…も、もういいだろ。
 ほら、遅いからそろそろ寝るぞ」(ぐい、と抱き寄せて頭を抱え込む)
ポーラ
「はーい! それじゃ、おやすみなさい」(にこにこ)

ある記念日のスター家・完

 

***

 

何も考えてなかったオトコと、何も欲しくないオンナの話、って事で。
って言うか、ラストの「ぐい」だけでジューブンだったんじゃないですかねポーラは。

ナルルの愛妻の日が、リアルの愛妻の日と大体同じ季節の出来事だとしたら、この時期ラダスタインはナルルにいないわけですが…そこはスルーでお願いします。
せっかくだから定番以外のプリンを作らせたかったんだ!
どうでもいいけど、「ばけつでぷりん」って、アコガレですよね…。(ホントにどうでもいい)
…それ以前にプリンの件全体がトートツな気もする…って言うか、話的に必要ないんじゃないかって気がするんですが、コレは中の人がリアルで「愛妻の日に甘いものを食べた」事象に引きずられています(笑)。
うん、アップルパイは美味しかったよ。(激しくどうでもいい)

 

…ちなみに。
翌日ジャメルさんを捕まえて飲みながら状況を聞いたジョシュアさん。

  「お前なぁ…。せめてキスぐらいでもすればいい事だろ」
  「愛妻の日だからわざわざする事か?」←酔ってるので微妙に口が軽い
  「…ちょっと待て、それはどっちの意味で言ってるんだ。
   『する必要が無い』なのか、『記念日関係なくいつもしてるから意味無い』なのか」
  「後者だ」(即答)←ワリとキス魔
  「お前らなぁ…」

と、違う意味で呆れ返り。

ポーラはなぜか、友人たちに引きずられてアラクト亭に連れ込まれまして。
リタさんを筆頭にした女性陣に

  「アナタは無欲すぎるのよ!」
  「こんなチャンス滅多にないんだから
   色々してもらえばよかったじゃないの!」
  「ええー!?」
  「それこそチューとかでもいいのよ」
  「え、それは別に愛妻の日じゃなくても普段から…」
  「あ、そ、そう…。
   って言うか、それ以外にも色々あるでしょう!」
  「ええー?」

普段の惚気を交えつつ袋叩きにあいました(笑)。

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